On-Line University Project (OLU)への参加 (1995年〜1997年)

マルチメディア通信実験装置の経験から, ISDN回線を使ったTV講義が可能であり,通常の講義においてもマルチメディアを用いる効果がある感触を得ました.しかし,1994年頃のネットワーク環境は, 1989年時の構成よりも大規模化したものの,学外接続は128Kbps,キャンパス間でも1.5Mbpsという通信速度でした.ネットワークに余裕があるとは言えず,定常的に遠隔講義を行うのは無理がありました.

この頃, NTT が超高速な広域通信網をどのように活用するかが目標とした「マルチメディア通信の共同利用実験」を開始しました. On-line University Project (OLU)は,その実験のひとつとして実施されたもので,広域 ATM(Asynchronous Transfer Mode)を用いた超高速 (156Mbps) 回線を利用し,大学間で,教育研究用の情報交換を実現する手法を研究するプロジェクトです.九州工業大学ほか 18 大学,20 個所と NTT および NEC の研究所を接続し, 1995年4月から1997年3月の2年間実施されました.

このプロジェクトは以下の5つの研究部会で行われ, (3)の研究部会の共通プロジェクトとして,講義のVOD,講義のリアルタイム伝送などがありました

  1.  超高速ネットワークシステムの構築に関する研究部会
  2. 超高速ネットワーク環境下における超並列処理システム/ワークステーションクラスタシステムに関する研究部会
  3. 先端的研究・教育を支援するための高度知識共有に関する研究部会
  4. 開放的知的情報ベースに関する研究部会
  5. 知的かつ高品質なソフトウェア研究部会

 OLUを使った遠隔講義

OLUプロジェクトの中で,九州工業大学は当時次のような研究計画を立案していました.

  1. 知的教育システムの構成原理と実現環境
  2. 技術英語の学習環境の提供
  3. 遠隔授業
  4. VLSI設計教育支援体制の整備
  5. クラスタコンピューティング環境の構築
  6. 医療情報サービス
  7. ソフトウェア設計のための高度知識共有
  8. イソップワールド
  9. WWW機能を拡張した分散教育環境の研究

特に(c)においては,以下のような双方向通信の遠隔授業実験を行いました

  • 本学附属図書館分館 第19回講演会(1995/10/13 16:30〜18:00) 『インターネットとマルチメディア −やさしい解説と遠隔講義の実験−』 (奈良先端科学技術大学院大学との間)
  • 知能情報工学科大槻説乎教授(当時)の最終講義(1996/2/27)(広島市立大学との間)
  • 双方向での通信による定期的なゼミ(広島市立大学との間)
  • さまざまな打ち合わせ会議

    

この実験で使用したネットワーク帯域は片方向で13.7Mbpsであり,高速なネットワーク環境と動画像の表示処理や音声処理に必要な計算機パワーがあれば,遠隔講義も可能であることが1995年当時に実証されました