SCSの設置 (1997年〜)

放送教育開発センター(メディア教育開発センター)(※2013年6月現在放送大学)は「衛星通信による映像交換を中心とした大学間ネットワーク」である スペース・コラボレーション・システム(SCS)事業 を開始しました.九工大も,OLUプロジェクトの終了後の1997年にSCS機材が導入されました

 SCSでは,1チャネルで映像と音声の双方向1対1通信が可能で,最大2チャネルを使うことができます.例えば,九州工業大学〜京都大学で打合せをしている時に,別の大学同士がもう1つのチャネルを使うことで,同時に2グループの会議を開くことができます.また,多数のSCS局が参加するような会議では,議長局をあらかじめ決めて1つのチャネルを使用します.もう一方のチャネルは発言局に使用させ,残りの局は議長局と発言局の2つの映像と音声を聞くことになります.聞いている局が発言をしたい場合は,「発言要求」というボタンを押します.この要求は議長局に伝わり,議長局がチャネルを切替えて発言局を交替させます.

九州工業大学のSCSは飯塚キャンパスに設置されたため,戸畑キャンパスからはSCSを利用することができませんでした.そこで,TV会議システムの更新で不要となった旧タイプのコーディックを使って,飯塚キャンパスのAV講演室から戸畑キャンパスのTV講義システム (当時の名前でホセンA教室)に向けて,映像と音声を送信しました(写真).回線容量の制限とコーディックの性能から,使えるどうか心配でしたが,試してみると以外にも画質の劣化は気になりませんでした.

 

これでSCSの2チャネル分の映像と音声を,戸畑キャンパスでも送受信できるようになりました.しかし,問題は「発言要求」を押せないことでした当初は飯塚に発言ボタン係を配置したこともありましたが,画面共有ソフトウェアを導入して,戸畑キャンパスから飯塚キャンパスの「発言要求」を TCP/IPネットワーク経由で押せるように工夫しました.その後,SCSの改良が行われ,現在では遠隔制御が可能なソフトウェアを戸畑キャンパスの PCにインストールしておけば,簡単に制御できるようになりました.

 

SCSはTV講義システムや OLUで実施した遠隔講演を簡単に利用できるようにしたものです.但し,システムの構成が複雑なため,「操作手順が面倒である」という問題に加え,

  • チャネル数が少ないため予約が難しく,突然の利用に対応できない
  • 音声レベルの調整に手間がかかる
  • 相手大学との時間割がずれていると,1コマの講義のために前後を含んだ3コマの予約が必要

といった問題点もありました.

九州工業大学のSCSは当初好調な利用率でしたが(参考文献),最近は活用の機会が減ってきています.これは,インターネット(SINET)が高速かつ安定した性能を発揮できるようになり, TV会議システムのコーデイックの性能向上により, TCP/IPを使ったTV会議や遠隔講義が手軽にできるようになったからだと思います.しかし,SCSは同期型の遠隔講義にはまだまだ使えるシステムだと思います. 2003年度より実施している「工科系大学教育連携事業」では,単位が取得できる講義もSCSを使って行われています.今後のあらたな活用に期待したいと思います.