VUプロジェクトの参加 (2000年〜)
2000年1月よりスタートしたVU推進事業は,メディア教育開発センター(NIME)を中心に,九州工業大学と北陸先端大学院大学の3組織による共同プロジェクトでした.我々のグループは理系科目でしたが,1年遅れで,千葉大学と広島大学と NIMEの文系科目グループも別途実施されました.
バーチャルユニバーシティ推進事業の目的は,現在のインターネットおよび将来の高速インターネット環境を鑑み,インターネット教材の作成,試用,評価などに基づく実証的な研究・運用を通して,バーチャルユニバーシティの運営上の問題点や必要な資源等の整理を行い,日本型バーチャルユニバーシティの実現に向けての基本モデルを確立することでした.
九州工業大学では,2科目以上のVU教材(学部用)を作成するために 2000年3月より撮影を開始しました.どのような教材にするかは担当教官に任せる方法で,いろいろやってみることに重点を置きました.
スタンダードな教材の構成は, Webページ資料(PDFファイルやPPTファイル)と講義ビデオ(解説と映像) の組み合わせとしました.九州工業大学では1994年からWWWサーバを実験的立ち上げ, 1996年からは授業での一斉利用が可能な環境を提供していました.そのため既に慣れていたこともあり, Webページ資料について,各担当教官は楽に作ることができたようですが,講義ビデオの作成が大変な作業となりました.
講義ビデオの撮影には,
- 見せたいものを映像として撮影(特殊な装置やコンピュータ画面など)
- 講義そのものを撮影(座って解説,立って解説,リアプロジェクタと共に解説)
といった様々なものがあるため,プロの撮影会社に頼みました.通常,撮影クルーは4名を1組として撮影を行うのですが,予算の都合で1クルー3名(カメラマン,照明さん,音声さん) +学生(タイムキーパ/記録係)で行いました.
撮影上の問題点としては,撮影手順に無駄が発生してしまうことでした.講義担当者は監督者でなければ撮影は進まないのですが,ストーリを考えていない方が多かったと記憶しています.例えば,最初のイントロを座って撮影した後に,コンピュータ画面を撮影してくれとなりやすい,ということです.講義順序通りに撮影をしたくなるのですが,撮影効率が言えば,最初のイントロを座って撮影した後に,最後のまとめを座って撮影して,座った撮影をすべて終えてから,次のシーンを撮影することが望ましいのです.
当時のプロジェクト運営メンバーは全員ボランティアでした.講義ビデオの撮影は業者がやってくれるのですが,撮影の予約や段取りをとるのに苦労しました.特に「協力してください」とお願いしながらのプロジェクトの進行が大変でした.このVU推進事業は2年間で一応終了し,以下に示すような試作教材を,九州工業大学として作ることができました.
分担 | 担当 | 当時の所属 | |
物理学 | 基礎力学 | 近浦吉則,鈴木芳文 | 工学部 |
電磁気学 | 松下照男 | 情報工学部 | |
LSI技術入門 | 浅野種正 | マイクロ化 総合技術センター | |
情報処理概論 | プランニング概論 | 安部憲広 | 情報工学部 |
コンピュータビジョン概論 | 江島俊朗 | 情報工学部 | |
人工知能概論 | 平嶋宗 | 情報工学部 | |
データベース概論 | 廣田豊彦 | 情報工学部 | |
ロボット工学概論 | 石井和男 | 情報工学部 | |
地理情報システム概論 | 硴崎賢一 | 情報工学部 | |
仮想現実システム概論 | 硴崎賢一 | 情報工学部 | |
コンピュータグラフィックス概論 | 乃万司 | 情報工学部 | |
コンピュータネットワーク概論 | 尾家祐二 | 情報工学部 | |
知識情報処理概論 | 竹内章 | 情報工学部 | |
パーソナルコンピュータ入門 | 井上純一 | 情報科学センター | |
その他 | 外国語 | 栗山次郎 | 情報工学部 |
都市ゴミのゼロエミッション入門 | 白井義人 | 情報工学部 | |
茶の湯へのいざない(仮題) | 情報工学部 |
VU推進事業で導入された装置群としては,以下に示す5つのサブシステムがありました.
通称システム名 | 構成装置名 | |
(1) | インターネット配信サブシステム | インターネット配信装置,教材蓄積装置 |
(2) | 在宅受講環境実験サブシステム | 在宅受講環境実験装置 |
(3) | 高速ネットワークサブシステム | インターネット配信装置 |
(4) | 教材作成支援サブシステム | 教材開発装置 |
(5) | 撮影支援サブシステム | その他の装置 |
1)や(3)のサブシステムは現在も稼働していますし, (2)のサブシステムは,学内での利用に加え,免許法認定公開講座(情報)にも利用されました.また,(4)および(5)を使って,「工科系大学教育連携事業」や「高等教育IT活用推進事業」への活用を行っています.